先日、縦割りクラスの園外保育で、3年ぶりに梨狩りに行きました。天候が不順ではありましたが、皆の思いが通じたのか、雨にも降られず、実りある収穫体験ができました。踏み台を自ら運び梨をもぐ子、梨が大好きなお母さんにお土産なんだと笑顔を見せる子など、子ども達の主体的な姿が見えました。試食では、友達と一緒だから苦手な梨に挑戦する子もおり、それ以来、梨を食べられるようになったという声も聞きました。梨狩りを再開できたことを、本当に嬉しく思います。
夏休みが明けて子ども達は一段と成長し、夏の思い出を生き生きと話してくれています。話の内容から、充実した日々を送れたことが推測できます。自らの心が動いたからこそ、言葉で喜びを表現できているのでしょう。この、「言葉で表現する」ことを、子どもたちがどんな場面でもできるようになってもらいたいと思っています。
人間は生まれてから、母親や身近な人の言葉を模倣して、言葉を覚えていきます。幼稚園に入園してからも、模倣から始まり、近くにいる大人に傾聴、代弁してもらう中で、場面に適した言葉を習得していきます。そして日ごろの会話や絵本などを通して、言葉をより豊かに自分のものとしていきます。つまり言葉は、段階を踏んで覚えていきます。そこで大切なのは私たち大人の存在です。子どもは話したい相手がいることで、主体的に話すようになっていきます。5歳位からは、傾聴・代弁の受容的対応に加えて、会話を通して子どもの言葉を引き出すことも意識してあげましょう。そして話しているときに、頷くだけでなく、「何があったの?」「~ちゃんはどんな気分だったの?」「~くんはどうしたいの」と質問してあげると自分の気持ちを言いやすくなります。大人からすると、自己流に聞こえるような会話もあるでしょう。そのような時は、一緒になって気持ちを表現する言葉を考えてあげましょう。一緒に考える時間も対話力向上の良い体験です。身近な信頼のおける大人との会話から、子どもたちは、安心して自己表現できるようになっていくのです。
言葉で思っていることを表現できるようになると、人間関係が豊かになります。会話での意思疎通が容易になりますから、お互い思っていることを話し合いながら遊びを深めていきます。年長児になると、「こっちのほうがいいんじゃない」「こうするともっと面白い」「そのアイデアいいね」など、会話で遊びを発展させられるようになります。時には強い言葉同士でも、お互いに言葉で意思を伝えあっていますから、子どもにとっては遊びが面白く、イメージも共有でき、次々と遊びが発展していきます。また、困ったときに助けも求められますから、日常生活も安心して送ることができるようになります。素直に言葉で気持ちを表現できることが、子どもたちの日常を安定させていくのです。
自由登園、預かり保育の短縮など皆様のご協力のおかげで、新型コロナウイルスの陽性者も落ち着き始めました。ご理解・ご協力に感謝申し上げます。
園長 齊藤晴彦